スルー失敗

思いがけず、英語教室を立ち見。

とあるビルの、商店街みたいなテナント階。
どのテナントもガラス張りなので、通りすがるだけで中身がばっちり全部わかる。
マダムによるマダムのためのブティック、初心者大歓迎のパソコン教室、空き物件、など。

昼間のうちに来るぶんにはいいけど、夕方以降はがらんとして怖いかもなぁ…などと思いながら歩いていると、英語教室があった。
英語教室自体はまったく珍しくないのでいつもならスルーだが、ここはリアルな授業が丸見え。
思わず足を止めてしまった。

ガラス張りの教室の横幅いっぱいを使って、ホワイトボードが外に見えるように置いてある。
つまり、テナントスペースの奥から、ホワイトボード→その前に立つ講師→生徒用机→生徒の後ろ姿→ガラス→私、という位置関係になる斬新なディスプレイ。
講師は通行人がいちいち目に入るだろうし、通行人が立ち止まって教室内をまじまじと見ようものなら気になってしょうがないだろう。
ここで教えるのは落ち着かないよなぁ。
一方で、このディスプレイは「ご自由にご覧ください」と言っているようにも見える。
お商売的には、まあアリっちゃあアリか。

読んじゃう病の私の目がまっさきに向かったのはホワイトボードの文字。
すでに英語の文が4つ書いてあった。

1行目には「I’m nice to meet you.」
ほう。
「It’s nice to meet you.」と「I’m glad to meet you.」がかかってんのかな。
とりあえず、自己紹介のレッスンらしいということはわかる。
中の様子はくっきり見えているが、さすがに防音なので、声は聞こえてこない。

講師は若い女性。
生徒は、後ろ姿からすると、30代と思しき会社員風の男性。
看板になっているユニークな教育方針から、勝手にシニア向けの教室だと思っていたのでちょっとびっくり。

ホワイトボードに目を戻す。
生徒の男性の実情に合う自己紹介を、講師が作ってあげているっぽい。
「I like movie.」
うーむ。
「I want to see the movie.」
この’the’も、本当に大丈夫なヤツかしら。
「My job is making camera for iPhone.」
あぁ、それで英語が必要になったのかな。
…って、いやいや、生徒本人が言うのはいいけど、これ、講師がボードに書いた文なんだよね?

私が足を止めてからここまで、わずか10秒ほどだろうと思う。
こんなところで、いきなりこんな壮大なスペクタクルに出くわすとは。
油断も隙もない。

どうやら発音練習が始まるタイミングだったらしく、講師は慣れた手つきで英文の上部にカタカナを書き込んでいく。
「ウォント トウ」の、「トウ」の「ウ」が明らかに特大サイズ。
あれはどう読むのが正解なんだろう。

いたたまれなくなって、その場を離れた。
少し時間を置いて、そこで見たものをできるだけ好意的に解釈してみた。

たぶん、講師に悪気はない。
英語が大好きで、英語を使うお仕事に就くことを夢見て、何か月かの語学留学ぐらいはした経験がある…とか、そんな感じだろうか。
ならば、まぁ彼女にとっては良い職場だ。
生徒は、英語への憧れを抱きつつも、特に必要に迫られているわけではないのだろう。
英語がなくても立派に社会人ができていて、これからもやっていける。
お金も労力もかけずにペラペラになれたらラッキーだし、もしなれなかったら「やっぱ英語いいや」とすっぱり足を洗うぐらいの軽い気持ちなのかもな。
じゃ、ま、いっか。

この10坪程度の賃貸フロアで、細々とやってるだけの教室だからね。
大した影響はないでしょう。
街には、趣味のお稽古事を提供する場が必要だしね。
彼はたまたま働き盛りのように見えたからどうしてもモヤモヤするけど、あれが私の想定どおりシニアの生徒さんだったら、意外と微笑ましいぐらいで済んだりするのかもな。
じゃ、ま、いっか。

無理はあるけど。
世の中には本当に本当にいろんな人がいるからな。
楽しければいいのかな。

…と、ドライに切なくまとめようと思ってこのブログを書き始めた。
ところが。
資料確認癖が災いして、うっかり教室のサイトを見てしまった。
お手軽料金じゃなかった。
手広く展開されていた。
なかなかの野心が記されていた。
あああ。

うちのコたちよ。
やっぱりもうちょっとしっかりしよう。

「スルー失敗」への2件のフィードバック

  1. ちょっとザワザワきてしまいますね。

    とくにしょっぱなの「I’m nice to meet you.」は、受講者の男性が思わずそう口走ってしまったので、講師がそのまま黒板に書いて、「さあ、これで OK でしょうか?」と受講者に問うているのだと、無理にでも信じたいところです。

  2. ま、まあそうですね。その可能性はないとは言いきれなくもないかもしれないこともないです。

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