冤罪

冤罪を晴らしに、裁判所へ。

友人の家へ向かう途中で銀行に寄った。
駐車場に入ったところで、後ろにパトカーがいるのに気づいた。
「あらあら、銀行で何かあったのかしら」と思いながら、パトカーを先に通してあげようと右によけた。
するとパトカーも右に。
ん?私?

車を止めると警察官がやってきた。
「免許と登録証を出せ」と言うので、
「出しますけど、何でしょう?」と聞く。
「ケータイだ」。
???
「何ですか?意味がわからない」と言うと
「英語はしゃべれるか」
「しゃべれますけど、ケータイが何ですか?」
「ケータイだ。それに“school is on”」
???
NY州で運転中のケータイ取締りが厳しくなっていることを、なぜかふと思い出した。
「ひょっとして私が運転中にケータイを使ってたということですか?」
「そうだ」
「使ってませんよ?」
「ケータイはどこにある?」
「バッグの中です」
「そうだろう。それがさっきキミの耳に当たってたよな」
「いえ、当たってません。触ってもいません」
「はいはい。言いたいことは裁判所でどうぞ」

…ってなやりとりを経て、問答無用でチケットを切られた。

こういうとき、もちろん動揺もするし腹も立つんだけど、私は自分でも驚くほど冷静になる。
この人と言い合いをしても何にもならない。
ここはさっさと済ませて、裁判所へ行こう。
やってないんだから、どうってことない。

警察官がパトカーに戻って書類を作る間、遅刻することを友人に伝えようかと思ったけど、この場面でケータイを使う姿を見せるのは癪なので、やめた。
気持ちはまだ高ぶっているし、こういう待ち時間は長く感じる。
銀行に入っていく人たちがこちらをチラチラ見ている。
もし日本から来たばかりで英語もよくわからない人がこんな目に遭ったら、本当に気の毒だ。
落ち着かなくて、居たたまれなくて、つい車から降りてしまって、事をややこしくしてしまうかもしれない。
それで、帰宅後にこのブログとFBに注意書きを載せた(参照)。

出来上がった書類を手渡しながら、警察官はご親切にも
「裁判所に無実を訴えたかったら、郵送でもできるから」と教えてくれた。
「はい、そうさせていただきます」
「じゃ。くれぐれも運転中のケータイをやらないように」
「やってませんけどね」

その後、とりあえず銀行の用事を済ませ、運転に支障が出ないよう気持ちを整えて友人宅へ。
到着する頃にはすっかり平常心に戻り、久しぶりに友人たちと会えた喜びで、うっかり忘れちゃってた。
しばらく経って思い出して、「そうだ!聞いてよー」と文句をぶちまける。
友人たちが話を聞いてくれて、同情してくれて、各種チケットや裁判にまつわる経験談を聞かせてくれたおかげで、気が楽になった。
ありがたい。

その夜は別の友人たちやネットを頼って情報収集。
友人たちはみんなすぐに反応してくれて、管轄の警察署に知り合いがいるから聞いてみる、とか、いざとなったら弁護士を紹介してあげる、とか、警察官との会話を思い出して書き留めておけ、とか、DMVで違反歴がない証明書を作ってもらって裁判所に持っていくといいよ、とか、いろんな情報があっという間に集まった。
ありがたい。

もちろん友人たちは一緒になって怒ってくれて、それも精神的に大きなサポートになった。
それにしても途中で何度か出てきた“school is on”ってなんだよ。
意味わかんない。
時間の無駄。バカバカしい。んもー。

そして、グッタリ。
私は普段怒ることがほとんどないから、自分の脳が急激に大量のエネルギーを消費するというのがどういうことか、よくわかった。
そうかぁ、怒りっぽい人って大変なんだな。
でも怒り慣れてる人はこんなに疲れないのかな。
ま、いいや。

翌日は友人のアドバイスに従って、携帯電話会社に連絡。
案の定たらいまわしに遭ったけど、Sworn statement (ケータイの使用者本人が、正当な理由で履歴を要求している宣誓)をしたためて、どうにか電話の使用履歴を発行してもらえることに。
これで該当の時間に通話していないことが証明できる。
警察官との会話の記録と、通話記録の発行待ちである旨を添えて、無実の訴えを裁判所に郵送。

こういうのもさ、しっかり者の友人がアドバイスをくれたり、私がネット上でちゃんとした情報をパパッと見つけられるからいいようなもんの。
来たばっかりの外国人だったら、本当に気の毒。

それから、2週間。
何の音沙汰もない。
連休前にもう一度、友人に相談。
で、念のため、もともとCitationに記載されていた日時に裁判所へ出向いてみることにした。
連休明けの月曜、朝イチのオフィス街。
裁判所の建物に入ったら、笑顔だけど目が鋭いオフィサーに
「交通は隣の、時計がついてる建物だよ」と言われた。
「え、市役所のこと?」
「そうそう」
市役所では陽気なオフィサーに迎えられ、金属探知機の音に反応したらウィンクされた。
いやいや。

指定のオフィス前にはすでに並んでいる人がいて、私は3番目だった。
すぐに私の後ろにも並ぶ人が現れて、4人で待つ。
「ここでいいのよね」とか、「何時に開くんだっけ?8:30だよね、そうだよね」とか、「罰金ってどこで払うのかな?」とか、前の人も後ろの人も、何やかんや、しゃべりかけてくる。
私だって初めてだから、知らないっすよ。
ソワソワすんのはわかるけどね。

「裁判所で通訳しませんか?」のポスターが目に留まる。
そうだよねぇ、日本から来たばかりの人だったら通訳ほしいよね。

で、順番が来て、事情を話す。
担当者がパソコンを叩いて、念のため今日発送分の書類も調べて、「Dismissed (取り下げ、棄却、日本では『免訴』というのかな)」。
警察官がCitationを提出しなかったらしい。

というわけで、あっけなく無罪放免。
いや、いいんだけどさ。
んもー。

返す返すも、私でよかったよ。
ったく。

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