Meeting Dress

師匠に会う日は、着るものを選ぶ。

このところ、きっちり月イチで師匠とミーティングが入るようになっている。
1対1、オフィスでみっちり1-2時間の話し合い。

それはいいんだけど。
何を着ていくか、困る。

さまざまな出来事を経て、私と師匠との関係性は変化してきた。
出会った当初は「エライ大先生と、遠い国から来たばかりの留学生」、その後「命令する上司と、抵抗する部下」や「一周まわってやっぱりエライ大先生と、長いこといる弟子」、で、どこかの時期から「お父さん的に世話を焼きたがる師匠と、それに戸惑う弟子」という要素が入ってきた。

夏休み明けなど、久しぶりの場合はもちろん、数週間あけたぐらいでも、オフィスに入ると師匠の第一声は「痩せたな」。
そりゃ確かに私は肉付きのいいほうではないけど、そんなにどんどん痩せていってはないよ、と思う。
で、「ちゃんと食べてるか」と続く。

以前、弟子仲間に、「師匠さぁ、なんか親ぶりたがらない?」と持ちかけ、私が毎回「痩せた」「食べてるか」と言われる、という話をしたらものすごく驚かれた。
他の弟子は師匠と研究以外の話をしたことがないと言う。
“How are you?”も無視されるし、雑談をはさむ空気じゃない、と。
いや、私も最初のうちはそうだったんだけどさ。

8月のときはいつもの「食べてるか」に「ええ、まぁ」と返して切り上げようとしたのだが、「何を食べてる」と来た。
「肉は食べるか、甘いものはどうだ、チョコレートは好きか」と。
えーと。
「お肉は食べてます。甘いものはあんまり食べませんが、チョコは時々」と答えると、「それだ。甘いものをもっと食べなさい。特にチョコレートは脳のためにもいいんだぞ。研究に集中するためにも、太るためにも、チョコレートをもっと食べなさい」。
えー、いやぁ…。はい。

それで終わったかと思ったら「外食はするか、自炊が多いか」。
えーと、自炊が多いです。
「それだ。キミは日本の料理を作ってるだろう。だから太れないんだ。もっと脂っこいアメリカ料理を食べなさい。」
えー、いやぁ…。はい。

「うちの娘もそうなんだ。私に言わせれば彼女は痩せすぎで、それでもキミほど痩せてはいないが、とにかく食べる量が少ないし、ヘルシーなものしか食べない。私がもっと太るように言っても聞きやしない」。
それか。
我が娘への不満を私に転送しないでよ。

9月のときは「ちゃんとチョコレートと脂っこいものを食べてるか」と来た。
「ええ、まぁ」と答えたが、「まだ足りない。キミは痩せてる」と言われた。
実際には師匠の言いつけを無視して食生活は全然変わってないし、たぶん体重も変わっていない。
仮に急に食べたってそんな急に太れないしね。
そこで10月はゆったりしたセーターを着てミーティングに向かった。
見た目が大きくなってれば、だまされてくれるかも。
フグの考え方やん。

これが功を奏したのか、10月は「痩せたな」のコーナーなしで、いきなり研究の話に入った。
よっしゃ。

こうなると師匠に会う日は大きく見える服装を選ぶ必要が出てくる。
ミーティング前は資料を読み込んだり、考えをまとめたり、他にすることがいろいろあるのに、仕事が増えてしまった。

今月はニットのワンピースに、大柄のストールでごまかした。
当日は北国の11月にしてはありえないほど気温が高く、ストールを外したいほどの暑さだったが、我慢我慢。
おかげで今月も「痩せたな」のコーナーはなかった。
よっしゃ。

来月以降の冬シーズンは厚着になるから大丈夫かと思いきや、実はそうでもない。
真冬にダウンコートの前をきっちり閉じていると、かえって痩せて見えてしまうのだ。
オフィスに入る前には開くのを忘れないようにしなくちゃ。

お相撲さんの着ぐるみレンタルとか、こっちにはないからなぁ。

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