Impostor Syndrome

Impostor Syndrome って日本ではあんまり知られてないのかな。

研究を含むチャレンジングな場所に所属する人が多いせいか、私周辺ではよく知られている用語。
そういえば日本語でなんて言うんだろうと思って調べてみたところ、「詐欺師症候群」。
うぅーん、まぁ、ね。

内容は日本人にはすとんと理解できるタイプのものだろうし、むしろ「へぇ、外国にもあるのか」ぐらいじゃないかと思うけど、思ったほど一般に知られているって感じじゃない。
ネット上にある日本語の情報は個人的な発信ばかりで、書き手がそれぞれ英語から訳して伝えているので、微妙に誤解が混ざっていたり、やや強引な解釈を上乗せしていたり。

ふーん。
では、私も日本語で説明を試みてみよう。
以下、私の勝手な解釈。
良い子は自分でちゃんとしたソースに当たってね。

“Impostor(またはImposter)”とは何者かになりすまし、本来いるべきでない場所に紛れ込んでいるニセ者のこと。(だから「詐欺師」という日本語はいまいちな気がする。)
1978年に臨床心理学者のClance とImes が不安を訴えて心理セラピーを受けに来る女性たちによく見られる感情として発表した。
1985年には男性にも同様の感情があることが発表されている。
40年近い歴史があるためか、英語圏では特に心理学に詳しくない人の間でもよく知られている。

事業に成功したり、高い地位に抜擢されたりして活躍する人が、その客観的な評価や揺るぎない実績とは無関係に「自分には実力がない」と信じて疑わないこと。
「自信がない」の文脈で登場することが多い。
“Syndrome(症候群)”と呼ばれているが、日本語で「病気」と呼んだりするのはやりすぎだと思う。

Impostor Syndrome にかかっている人は、自身の成功や実績について「過大評価」「えこひいき」「運がよかっただけ」「何かの間違い」と表現する。
つまり、成功や実績は自分の実力を認めるのに役立たないばかりか、結果を出せば出すほど、本人の思う“自分の実力”から乖離していくことになるため、Impostor Syndrome は悪化する。
「自分は実力以上に評価されて紛れ込んでいるだけなのに、周りはそれに気づいていない」というところが「なりすまし・ニセ者」という名の所以。
そして「いつかバレて摘み出されるんじゃないか」と不安になったり、不当や不公平によって甘い汁を吸っていることに罪悪感を覚えたりする。

この「乖離」がImpostor Syndrome のポイント。
周囲からの高い評価と、相対的な関係で成り立つ感情なので、Low self-esteem(自尊心の低さ)とはちょいと違う。
だから「周りなんて気にせず、自信を持ちましょう♪」なんてお気楽なアドバイスは的外れ。
そのアドバイスができる人やそれが聞ける人はImpostor Syndrome とは無縁の健康な人。
よかったね。

で、なぜ今さらImpostor Syndrome かと言うと、例のPhDなMOOC の今週のテーマがこれなのだ。
もちろん受講生はみんなImpostor Syndrome を知っていて、ほぼ全員、心当たりも自覚もある。
どの具体例も、みんな「あるある」「わかるわかる」。
今朝とれたてのホヤホヤなImpostor Syndrome を報告してくれる人もいる。

ディスカッションのあちこちで引用されているTEDの講演が、いずれも私が翻訳に携わったものだったり(参照1 参照2)、議論がVulnerability(参照)へと展開したり。
あらためてこの話題は私にとって身近なんだよなぁと思う。
私たちは逃げずに自分を見つめる人が好みなのだ。

そういう共通見解、共通体験をベースに、唯一ここは分かれるんだなと思うのは、「Impostor Syndrome を克服したい」という人と「自分の一部だと思って受け入れている」という人がいる点。
同じ人でもステージによって“克服派”になったり“承認派”になったりするのかもしれないしね。

そして、Supervisor/ Advisor/ 師匠の立場でこのMOOC を受講している人の経験談や「Impostor Syndrome の学生を持ったら」的なガイドを読み、あらためてうちの師匠に深く感謝する。
手間のかかる弟子で、本当に申し訳ない。

※以下、Related Posts 解説
自信 (2008/4/24)はDunning–Kruger effect を知らなかった頃。
Self-esteem (2010/4/10)はLow self-esteem とIS の区別がついてなかった頃。

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