「メイク」

日本語の「メイク」のこと。

日本のある大手百貨店の新たな取り組み紹介の中で、大人っぽいフォントで「Make & Cosmetics」と書かれたロゴを見かけた。

もちろん意味はわかる。
化粧品の専門店だ。
でも「Make」って。
せっかくの高級でおしゃれな雰囲気が台無し。

英語の「Makeup」が日本語に入り、「メーキャップ/メイキャップ/メークアップ/メイクアップ」を経て、「メイク」になったのは間違いない。
でも、だからって日本語の「メイク」を英語の「Make」にしちゃうというのは強引。
お里が知れますわよ。

それをきっかけに「メイク」という言葉のことを考えた。
ツッコミどころ満載。
さて、どこから行きましょうかね(腕まくり)。

「メイクアップ」か「メークアップ」かについては、まぁ微妙だけどどっちでもいい、ってことみたい(参照1 参照2)。
「メイク」については「メーク」という表記は比較的少ない。
発音としては「メイク」より「メーク」の方が優勢のような気もするが、見た目には「メーク」より「メイク」の方がイケてるのかな。*
常により新しく、見た目にカッコいいものを求める業界の用語なので、今後は「メイク」に統一されていくのではないかと思う。

*NHKは2007年に「現在の慣用が母音字を重ねて表記するものに移ってきていると判断」し、「ネール→ネイル」「メード→メイド」などの表記を変更した。(参照

英語の「Makeup」についても、似たようなところがあるかな。
「Make up」や「Make-up」も使われているけど、スペースもハイフンもない「Makeup」がいちばん新しそうな気配。

その意味で、「メーキャップ/メイキャップ」は古い感じがする。
昨今の、より原語の音に近づける傾向のもと、「メークアップ/メイクアップ」に取って代わられつつあるのだろう。
化粧を施す仕事に従事する人を指して「メイキャッパー」という語も散見される(参照1 参照2 参照3)が、これも概ね「メイクアップアーティスト」に替えられている模様。
ただし演劇などの世界では今も「メーキャップ/メイキャップ」が使われているようだ(参照)。

いちおう「メーカップ/メイカップ」も検索してみたが、時代や文脈に関わらず、「Makeup」のカタカナ表記としてこれが使われていたことはなさそう。
このあたりの絶対的な偏り具合はカタカナ語にありがちな特徴。

メイクアップの専門家が言葉の歴史を追ったこちらのページ(参照)は、言葉の考察としては甘いが、おもしろい資料が集めてあるし、個人的にとても好感を持った。
自分の専門に関する言葉にこのくらいの興味を持つというのは、その道のプロとしてふさわしいことではないかと私は思うが、それができる人はなかなかいない。

「Makeup」の語源については
-「17世紀の初めにイギリスの詩人リチャード・クラショーが最初にこの言葉を使った。」(東京美容学校 美容辞書 参照
-「Cosmetics sense is from 1886」(Online Etymology Dictionary 参照
-「Four years later [=1920] [Max Factor] launched a full range of cosmetics, calling it “make-up” – a phrase he coined.」(The Max Factor History 参照
と、なんだかよくわからない。

それにしても、「メイク」の意味で「Make」はまずい。
せめて「Meiku」にしてほしい。
それなら日本語のローマ字表記だということがわかるから。
おしゃれじゃない度としては「Make」も「Meiku」も同じようなもんよ?

ま、美容やファッション、飲食、デザインの人たちは多分に“感覚派”(参照1 参照2)なので、言葉の詳しいことはあんまり気にしないかもね。
カッコよさを求めて、良かれと思ってやったことが、かえってカッコ悪いことになっちゃうという切なさ。
このあたりのこと、最近の私は日本の英語教育そのものとは切り離して、むしろ英語教育に縁遠いことの表れと考えるようになってきている。

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