Small World

パリで偶然、ご近所さんに会う。

フランス側が用意してくれた宿泊先は、大学のすぐ近くのシンプルなホテル。
フロントには1人が常駐していて4-5人が持ち回りで担当しているようだが、どの人に当たっても親切で安心できた。
冷蔵庫を借りることはできるかと聞いたら「ダイニングにあるのを使って」と言う。
え、勝手に?いいの?と驚くと、にっこり笑って、「うちはファミリーみたいなホテルだから、構わないのよ。心配だったら名前を書いて貼っておきなさい」と紙切れとセロテープをくれた。

そんなある日。
朝早く出かけることになっていたので、明け方に起きて準備をしていた。
部屋に設置されたガイドで朝食の時間を確認すると、週末のその日の朝食は7:30から。
それでは間に合わない。
こんなときに備えてあらかじめ用意していたフリーズドライの軽食とティーバッグを荷物から出し、お湯だけもらおうと思ってフロントへ降りていった。
(部屋に湯沸しポットが設置されていないのはフランスではよくあることらしい)

フロントのお兄さんはちょっと無愛想だった。
それでも私をダイニングに通してくれ、お湯を沸かしてくれ、届いたばかりの焼きたてクロワッサンを「食べなよ」と言ってくれた。
あらあら、すみません。
そんなわけで、思いがけず普通に朝食にありつけてしまった。

お兄さんがフロントへ戻り、一人で食べていると、階上からお兄さんと女性の話し声が聞こえてきた。
女性は初めカタコトのフランス語を話していたが、まどろっこしかったのか、おにいさんが英語に切り替えた。
女性は「いや、時間外だし、悪いわ」と言い、お兄さんは「別にいいよ。クロワッサン届いたし」とか言っている。
やがて二人はダイニングへ降りてきて
お兄さんが「ほら、彼女も食べてるでしょ」と言うので、私と彼女は挨拶した。
お兄さんは彼女にカフェオレを淹れて、新しい丸いパンを出してきて「これも食べな」と私のお皿に載せながら、「さっきは無愛想でごめん。君が降りてくるまで、たぶん寝てた」と言った。

お兄さんがフロントへ戻り、ダイニングに残された私たちは、「親切なホテルですよね」と話しはじめた。
「パンもコーヒーもいちいち美味しいし」。
英語から判断して、お互いにアメリカから来ているのは明らか。
彼女に「アメリカのどこから?」と聞かれたので、「ニューヨークです」と答えると、「あら、私もニューヨークよ。I 市だけど」
「えぇっ、私はA 市です」
「おぉ、じゃあご近所ね。パリへは観光で?」
「いえ、学会があって」
「え、もしかしてS 大学で?」
「はい。そちらもですか?」
「そう、昨日で終わったんだけど」
「私もです」
「笑 じゃあお互いようやくパリを楽しめるってわけね」

彼女はC 大学の教授で、今回はViolence についての学会に招かれたのだそうだ。

それから今日の予定を聞いたり、研究の話をしたりしていたら、彼女が「そういえばあなたの大学に知り合いがいるわ。H.E.という教授、知ってる?」と言った。
「いえ。どちらの学部かご存知ですか?」
「English」
「えーと、文学で、だとすると人文ですよね」
「そうよ。あなたの研究もEnglish なんでしょう?」
「いえ、私のはESL でして」
「あぁ、そうか。言語学の学会だと言ったわね」
「いや、それがややこしいんですが、学会は言語学なのですが、私自身は教育に所属しています」
「あぁ、それでESL なわけね。了解、了解」

※この会話が先日の「English」の記事(参照)につながっている。

お湯だけもらってちゃちゃっと済ませるはずの朝食が、思いがけず素敵な出会いとなった。

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