『日本経済こうすれば復興する!』

読書感想文第2弾。
『2時間でいまがわかる!日本経済こうすれば復興する!』

竹中平蔵・著。
言わずと知れた経済と政治のプロが書いた本。

経済にも政治にも暗い私が内容を論ずることはできない。
どうにかこうにか一読したとはいえ、そこに書かれていることが理解できたとは到底思えない。
そういう状況で、あえて感想を書くとしたらどうするか。

苦肉の策として、自分の理解できる部分をなんとか探し、話の本質とは無関係にそこだけひっぱり出して広げる。
Parkinson’s Law of Triviality、または友人Sの用語Educationally Less Valuable Talkが示すとおり、Trivialな発言の量と議論の質とは反比例する。
自分の理解を超えた議論の中に身を置いたとき、議論の質を低下させないためには黙っている方がいいのだけど、人は時に自らの保身のために議論の質を犠牲にするのだ。

という言い訳のような前置きをしたうえで、求められてもいないのにレビューしてみる。

この本の目的は日本経済にまつわる“ウソ”を暴き、社会の経済リテラシーを向上させること。
30の“ウソ”を提示、解説して特徴別に分け、各章に“経済リテラシーをつけるレッスン”というラベルを付けている。

Literacyとは識字能力のこと。
文字の羅列から意味のつながりを見出して理解(=読み)したり、文字や文章を使って自分の意思を表示(=書き)する力のこと。
通常は母語での能力を指すが、アメリカのような移民の国では母語と公用語が異なるケースが多いため、社会全体の実質的なLiteracyはどうしても低くなる。
アメリカで英語教育をやるということは、アメリカ国民の公用語Literacyを向上させるということ。
最高レベルのLiteracyが確保されている日本で、外国語としてやる英語教育とはまったく別のもの。

言語運用能力であるLiteracyという語は、”XX Literacy”という使われ方をすることによって、「XXという分野を扱うための教養」という意味を持つようになった。
情報リテラシー、メディアリテラシー、科学リテラシーなど、日本語の中でもよく使われている。
竹中氏のいう“経済リテラシー”とは、経済の用語や実情を正しく理解する能力、というような意味だろうか。
そして読者および国民の経済リテラシーを上げるためには、“ウソ”を暴いてみせることが有効だという前提でこの本は書かれている。

さて。
“ウソ”を指摘して並べておくとリテラシーは向上するだろうか。
リテラシー教育とはそんなに簡単なものではない。

私の解釈では、リテラシーとは、与えられた情報をきっかけに、多様な情報源から広く情報を収集し、食い違う意見を公平に受け止め、理解したうえで、自分なりのPerspective(見解)を構築する、というプロセスを経て、じっくりと伸ばしていくもの。
「これはウソだよ」「あれもウソだよ」「で、私の言うことだけがホントだよ」と言われて鵜呑みにするようでは、リテラシーとしてはお粗末極まりない。

日本語の『リテラシー』にはなぜか、「物事を批判的に捉える」「騙されないように気をつける」という、Literacyにはないニュアンスが勝手に付加されている。
アメリカ寄りで英語に堪能な竹中氏がこの点に無頓着であるというのは残念なことだ。

始まりは批判でも警戒心でもいいけど、そこで留まっていては本来の意味でのリテラシーは育たない。
たとえばウソを見つけたとして、果たしてそれはウソなのか、異なる見解が生む“複数の真実”なのか。
ウソを使い、あるいは暴くことによって、誰がどんな得をするのか。
そのうえで、自分はどの立場を支持するのか。
それを効果的に表明するにはどうすればいいか。
受信に必要な理解力と発信に必要な表現力の両方を備えなければ、リテラシーとしては片手落ちである。

この本を著すことで、竹中氏自身の経済リテラシーの高さは見事に証明された。
また、政治家やメディアや専門家の経済リテラシーの低さを非難し、それに対する不信感を高めるのにも成功しているだろう。
が、読んだ人のリテラシーを上げる“レッスン”を提供するには至っていない。

ちなみに経済リテラシーが非常に低い私には、まずこの本を読み進むのも一苦労だった。
それでもなんとか読み終えて、さぞ私の経済リテラシーは向上しただろうと思いたいところだが、たとえば再読してみたとしても理解度はさほど上がっていないだろうし、独自の経済的見解を述べられるようにもなっていない。

「2時間でいまがわかる!」「必ずできる!!」。
これは“ウソ”には入らないのかなぁ。

竹中平蔵 (2011). 日本経済こうすれば復興する! アスコム.

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